白内障
白内障とは
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白内障とは、目の中にある水晶体(レンズ)のタンパク質が白濁し、だんだんと広がっていく病気です。水晶体が濁って不透明になることで、光が網膜まで正常に届かなくなり、視力が低下していきます。白内障はワンちゃんが失明する原因として、特に多い病気です。
白濁した水晶体は薬では透明にならないため、根本的に治療するには外科手術が必要です。 -
白内障になる原因
白内障になる原因は、いくつか考えられます。
もっとも一般的なのは、遺伝や糖尿病、年齢によるものです。他にも目の外傷や、紫外線によるダメージ、栄養バランスの乱れなども挙げられます。 -
遺伝による好発犬種
遺伝性の白内障には、かかりやすい犬種があります。
プードル/アメリカン・コッカー・スパニエル/キャバリア/シーズー/ダックスフンド/チワワ/トイプードル/ビーグル/プードル/マルチーズヨークシャテリア/柴犬/など※この他のどの犬種でも白内障にかかる可能性はあります。
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発症する年齢
犬の白内障は、発症年齢で次の3つに分類されます。
- 先天性白内障(生まれたときから)
- 若年性白内障(6歳未満で発症)
- 老年性白内障(6歳以上で発症)
人間の白内障は加齢によるものが大多数ですが、犬の場合には若年性が多く見られます。また、若年性の白内障は進行が早く、手術の対象になることが多いです。
老年性の白内障であっても手術で視力が回復する事例もありますので、検査をお勧めしています。
※加齢により水晶体が青白くなる「核硬化症」という状態があります。見た目では白内障との区別がつきにくいため、変化に気づいたらまずはご相談ください。 -
白内障の進行
白内障は、水晶体の混濁程度で4つのステージに分類されます。
ステージ1(初発白内障) 水晶体の1割程度に濁りが見られる。視覚に影響はほとんどない。 ステージ2(未熟白内障) 水晶体の大部分がうっすら濁る。
視力が障害される場合があるが、まだ視覚は温存されている。ステージ3(成熟白内障) 水晶体が完全に混濁し、眼底が見えない。視覚は失われている。 ステージ4(過熟白内障) 水晶体が溶けて縮み、表面にシワがあるように見える。視覚は失われている。
重篤な合併症を併発する可能性がある。ステージが進行するにつれて、視力低下やブドウ膜炎、緑内障、網膜剥離など合併症のリスクが高まるため、早めの診断が重要です。
白内障の予防と治療
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白内障の対処の方法としては、予防と治療があります。
治療法には、白内障の進行を遅らせることを目的とした「内科的療法」と、根本的な治療をする「外科的療法」 (手術)があります。しかし、進行を遅らせることはできても完治させる方法は今のところないとされています。 -
白内障は予防できる?
白内障になる要因をできるだけ避けることで、発症を抑えることはある程度可能です。
【予防のためにできること】
- 強い紫外線の下に長時間いないようにする
- ケガにつながるような接触トラブルを避ける
- 糖尿病にならないよう食事や運動に気を付ける
しかし、先天性や遺伝性による発症はこの限りではなく、また予防薬も存在しません。そのため白内障は、早期に発見し進行を遅らせる対処をすることが重要です。
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白内障の治療法
治療法には「内科的療法」と「外科的療法」があります。
内科的治療法は点眼薬や内服薬による対処です。ステージ1~2の進行を遅らせることを期待する療法ですが、水晶体を透明に戻すことはできません。ステージ2~3になると一般的な点眼薬の効果が期待できないため、視力を回復させる方法として、水晶体の白濁物を取り除く外科的療法が推奨されています。【内科的療法】
点眼薬や内服薬で進行を遅らせるステージ1(初発白内障) ステージ2(未熟白内障) 【外科的療法】
手術により水晶体の白濁物を取り除くステージ3(成熟白内障) ステージ4(過熟白内障) また手術は白内障の進行度に合わせて難しくなり、合併症のリスクが増加します。
手術するにあたり「視力を回復できる見込みはあるか」「全身麻酔をかけても大丈夫か」などの状態を判断することはとても重要で、しっかり精査する必要があります。 -
合併症について
ワンちゃんの目はとてもデリケートで、術後の合併症発症率は高くなります。
白内障の手術で視力が戻っても、後で合併症が発症する可能性があることにはご留意ください。【合併症の例】
ぶどう膜炎/緑内障/網膜剥離/眼内出血/感染症/など -
白内障を放置するとどうなるの?
ステージ3以降の白内障は、手術をしてもしなくても、合併症のリスクが高まります。
また白内障を放置すると、失明するだけでなく眼球の摘出が必要になる可能性が高くなります。水晶体が縮み、溶けるなどの組織変性が起こり、様々な合併症を引き起こします。最終的には眼球癆(目がつぶれてしまう状態)に至ることもあります。
白内障手術について
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進行性もしくは急性の白内障に対する治療方法として、水晶体を手術で取り除くことが唯一効果的です。全身麻酔下で眼球の角膜を切開し、超音波を発する特殊な装置(白内障超音波乳化吸引装置)を用いて、水晶体を取り除きます。その後は人工眼内レンズを挿入し、網膜に光が届いて視力を回復できるように調整します。
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手術の目的
白内障手術の目的は、ワンちゃんの視力を回復させることと、合併症などのリスクを下げることです。また視力が低下することによって引き起こされる苦痛を軽減することにも繋がります。
視力が回復することで、以前のように外で遊んだり、飼い主様とコミュニケーションを取れるようになります。 -
手術の内容
白内障の手術は、以下のような手順で行います。
- 全身麻酔をかける
- 濁った水晶体を取り除く
- プラスチックやアクリルでできたレンズと交換する
目の炎症や違和感を抑えるため、術後は一日に数回、点眼薬でのケアが必要です。また、術創の保護が必要になるため、エリザベスカラーなどで目を保護します。術後の状態をチェックするために、必ず定期検診にご来院ください。
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手術で活躍する装置
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CENTURION® VISION SYSTEM
手術中の眼圧変動を抑え、手術の安定性を高める
CENTURION®は圧倒的な破砕力を持ち、コンピューター制御による眼圧安定システムが搭載されている装置です。最新のテクノロジーにより、手術中に変化しやすい灌流圧を自動的・計測的にモニタリングでき、眼圧の変動も安定します。眼内圧の変動が抑えられ、手術でのリスクが軽減し、安全性・安定性・効率性の向上につながっています。
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LUXOR REVALIA™
レッドリフレックス(赤色反射)が安定され、焦点深度の深い画像の撮影が可能です。また、高解像度のデジタルガイダンスを表示でき、的確かつ安全性の高い白内障手術のサポートが可能な装置です。
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白内障手術の流れ
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Step01診察の予約
診察のご予約は、お電話もしくはお問い合わせフォームよりお願いします。
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Step02診察
問診・全身の検査・眼科検査を行い、目の状態を診断します。
検査後は検査結果と目の状態について丁寧にご説明します。 -
Step03手術前検査
術前検査として、診察時の検査より詳しく目の様子を確認していきます。
検査は約2時間かかり、血液検査・レントゲン検査・超音波検査(エコー)などを行います。
これらの検査結果をもとに、白内障手術が可能かどうかを診断します。 -
Step04手術のご説明・手術予定日の相談
白内障手術に関して、手術前の準備と術後のケアを含めて分かりやすくご説明いたします。手術前後のケアは、飼い主様によるご協力が必要不可欠です。
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Step05手術当日
手術当日は、絶食・絶水の状態でお越しください。(胃の中に何か入っていると、麻酔時に嘔吐する可能性があり大変危険です。)
手術は全身麻酔下で行い、片目約1時間30分で終了予定ですが、導入から覚醒までの時間を含めるとプラス1時間は必要です。 -
Step06術後・退院
平均的な入院期間は約1週間前後です。術後の入院期間中は、抗生物質の注射をしながら回復を待ちます。
炎症の状態が治まり次第退院です。術後は1日に数回、点眼薬でのケアが必要です。 -
Step07退院後
退院後はご自宅で、内服・点眼を行っていただきます。
術後は、1週間後・2週間後・1か月後…と細かく術後経過を確認するための通院をお願いしています。
※ワンちゃんの様子に異変がある場合は、すぐにご連絡ください。【術後の注意】
- 1週間程度は顔回りに触れないようにしてください。
- 身体のシャンプーは退院後から可能です。
- 走ったりする激しい運動はしないでください。
白内障Q&A
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Q.白内障に痛みはありますか?
A.白内障自体に痛みはありません。進行すると合併症の発症率が高まり、何らかの痛みが発生する可能性があります。
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Q.白内障は感染しますか?
A.感染しません。
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Q.治療で使う目薬にはどんな効果がありますか?
A.初期段階の白内障に使用する点眼薬は、水晶体の濁りの進行を遅らせることが期待されます。
水晶体を透明にするのではなく、濁りが大きくなるのを防ぐ効果です。 -
Q.白内障かどうか、飼い主がチェックする方法はありますか?
A.ステージ1・2(初発期・未熟期)では、飼い主が気が付くことは難しいです。
ステージ3(成熟期)程度まで進行すると、「眼球が白くなる」「物にぶつかる」「においを嗅ぎながらゆっくり歩くようになる」など異変が見られます。
早期に発見・予防をするためには、定期的に眼科検診を受診してください。 -
Q.入院期間はどれくらいですか?
A.目の回復状態により変動がありますが、3日~1週間程度です。当院の診療時間内であれば自由に面会に来ていただけます。
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Q.手術後はどのくらいの頻度で通院したほうがよいですか?
A.手術後1週間後、2週間後、1か月後、2か月後、3ヶ月後、6か月後、1年後…と定期的に健診に来てもらうことをお勧めしています。